
「東京には果物の産地がない」
そう思われがちですが、本当でしょうか。住宅地の庭先やベランダに目を向けると、毎年静かに実をつけているレモンの木があります。
「東京檸檬(とうきょうレモン)」は、この見過ごされてきた資源に光を当てるプロジェクトです。
東京にも、レモンがある

都心は果物の産地ではない。多くの人がそう思っています。けれど実際には、住宅地の庭先や集合住宅のベランダに、毎年実をつけているレモンの木が点在しています。
収穫されず、食べきれず、落ちてしまう実。市場には出回らないけれど、誰かの手で大切に育てられてきたレモン。
東京檸檬は、この「気づかれないままの、もったいない」に目を向けるところから始まりました。
人気メニューの裏にあった、ひとつの壁

きっかけは、キッチンカー「しきぶちゃんキッチンカー東京号」の現場です。
事業2年目、看板メニューの無農薬レモネードは年間2,500杯以上を販売し、キッチンカーの柱となるメニューに育っていました。
実際、小松川夏祭りの出店でも「無農薬レモネードソーダ」は定番メニューとして提供されています。
ただ、人気が高まるほど、ひとつの課題がはっきりしてきました。無農薬レモンの「仕入れの不安定さ」です。
無農薬であるという条件・レモンの収穫期と端境期・仕入れ量と仕込み量のバランス・需要はありがたいほど増えていくのに、供給体制は常に不安定なまま。
「売れるのに、安定してつくれない」この状態が、事業としてもものづくりとしても、ずっと引っかかっていました。
お客様の一言から始まった発想の転換
そんな中、あるお客様との何気ない会話が転機になりました。
「うちにもレモンの木があって毎年実をつけるんだ。23区だよ」
市場に出回るレモンだけが、レモンのすべてではない。東京や関東近郊には、家庭の庭やベランダで育てられ、毎年たくさんの実をつけながら使い切れずにいるレモンの木が、実はたくさんあります。
「仕入れが安定しないなら、別の道を探すのではなく、育てながら、集めながらつくっていけばいいのではないか」。そう考えたことが、東京檸檬のはじまりでした。
無農薬にこだわる理由

東京檸檬が無農薬レモンにこだわるのは、「特別だから」ではありません。
レモネードは、レモンを丸ごと使う飲みものです。果汁だけでなく、皮の香りやレモンそのものの風味が味をつくります。
だからこそ、余計な心配をせずに使えるレモンであることが大切だと考えました。
無農薬で育てられたレモンは、見た目が揃っていなかったり、市場に出回りにくかったりします。それでも、人の手で大切に育てられ、暮らしの中で実をつけてきたレモンには、きちんとした理由があります。
東京檸檬は、そうしたレモンの背景ごと大切にしたいと考えています。
「レモネード」ではなく「シロップ」を選んだわけ
東京檸檬が選んだのは、できあがったレモネードを売ることではなく、レモネードのもとになるシロップでした。それは、レモンの美味しさを一番無理なく、長く届けられる形だと考えたからです。
水や炭酸で割るだけで、その日の気分や季節に合わせたレモネードを楽しめます。家ではゆっくり、外ではさっと、誰がつくっても同じ味わいになる。シロップという形は、暮らしの中に入りやすいものです。
東京檸檬は、レモンを「特別な一杯」にするよりも、日常の中で何度でも手に取ってもらえる存在でありたいと考えています。
実際にキッチンカーで展開している「ゴロゴロ果実のレモネードソーダ」シリーズも、ベースにあるのは無農薬レモンです。
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レモンの木と、暮らしの記憶
各家庭のレモンの木には、その家ごとの時間や思い出があるはずです。引っ越してきたときに植えた一本。子どもが生まれた年に育てはじめた木。気づけば毎年、当たり前のように実をつけるようになったレモン。
東京檸檬が集めているのは、ただの原材料としてのレモンではありません。そのレモンが育ってきた暮らしの背景ごと、大切にしたいと考えています。
レモネード一杯の向こうに、誰かの庭や誰かの時間がそっと重なっている。そんなレモネードでありたいと思っています。
あなたと一緒につくる「東京檸檬」

東京檸檬は、レモネードシロップを販売するだけでなく、レモンを育てている方とも少しずつつながっていきたいと考えています。
東京や関東近郊には、家庭の庭やベランダでレモンの木を育てている方がたくさんいます。使いきれずに余ってしまうレモンを、可能な範囲で買い取らせていただき、レモネードとして活かしていきます。大量にではなく、無理のない形で、育ててきたレモンを次の形へつなげていきたいと考えています。
庭にレモンの木があり、食べきれずに困っている方は、ぜひ公式LINEからご連絡ください。
未完成のプロジェクトとして、少しずつ
東京檸檬は、完成された特産品ではありません。いまはまだ、ブランドステートメントの言語化、レシピの確定、初期の仕入れ先探しといった「構想・準備」の段階にあります。
このあと、実際に商品を形にして最初の100人に届ける段階、味や保存方法を検証しながら続けられる仕組みを固める段階、そして少しずつ販売量を広げていく段階へと進んでいく計画です。
すべてのフェーズを通じて大切にしているのは、東京産レモンの比率を少しずつ、無理のないペースで高めていくこと。数を追って価値が落ちるような拡大はしない、という方針も決めています。
壁にぶつかって見えたもの
順調なことばかりではありません。ある補助金の申請では不採択という結果を経験しました。振り返ってみると、「やりたいことの実現」だけでは、社会的な必要性としては弱かったのかもしれないと気づかされました。
そこから、東京檸檬が解決しようとしている課題を、あらためて言葉にしました。
- 収穫されず廃棄・放置されている庭レモンの問題 → 都市型フードロスの削減
- 売るルートがなく、少量すぎて市場に乗らない個人・小規模農家の収益機会 → マイクロ生産者の収益化
- 輸送コストや環境負荷、東京産の価値の弱さ → 都市型ローカル経済の創出
- 「自分のレモンが商品になる」という関係人口づくり → 参加型の地域プロジェクト
都市部で使われていない資源・家の庭に実るレモンに焦点を当てることで、東京檸檬は単なる商品開発ではなく、都市の中の小さな循環をつくる取り組みへと輪郭がはっきりしてきました。
「困りごと」を集めるところから
そこで見直したのが、集める情報の質です。「感想」ではなく「困りごと」を集めること。
- 毎年どれくらい収穫しているか
- そのうち何%を使い切れているか
- 余ったレモンはどうしているか(廃棄・放置・人にあげる、など)
- 処分に困った経験はあるか
- 売ろうと思ったことはあるか
- なぜできなかったか
こうした声を集めるために、キッチンカーの店頭に「庭のレモン、余していませんか?」というPOPを掲示し、注文時や待ち時間の会話から公式LINEへ案内する導線をつくっています。
狙いは、次の補助金申請までに一次情報を増やし、プロジェクトの必要性そのものを裏付けていくことです。
小さな循環を、東京の仕組みへ
東京檸檬は、ご家庭や身近な場所で実っているにも関わらず、活用されずに終わってしまうレモンを集め、価値ある商品として生まれ変わらせるプロジェクトです。
この取り組みの特徴は、企業だけで完結するのではなく、一人ひとりが参加できることにあります。レモンを提供する人。それをつなぐ人。そして、それを楽しむ人。それぞれが関わることで、「誰かの庭のレモン」が「東京の価値ある一品」へと変わっていきます。
目指しているのは、単にレモネードを作ることではありません。この活動そのものを、東京の新しい特産品として育てていくことです。どこで作られたかわからない商品ではなく、誰かの暮らしの中から生まれたものが、街の中で流通し、人の手に届く。そんな顔の見える価値を、東京という都市の中で形にしていきたいと考えています。
小さな取り組みですが、この循環を少しずつ広げていくことで、都市に眠っている価値を、ちゃんと活かせる仕組みにしていきます。東京檸檬は、もったいないを価値に変え、人と人をゆるやかにつなぐプロジェクトです。
無農薬レモネードは、しきぶちゃんキッチンカー東京号の出店でも味わうことができます。

